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第10話

 ◇  夏休みになったその朝も、じわりと蒸し暑い通学電車は人であふれている。揺れながらつり革を持って立っているのにも飽きた海の目にとまったのは、小柄なおなじみの背中を見る。ああ、朝から”彼”に出会えるなんて。嬉しくなってそっと声をかけようと近づくも、その彼はぎゅっと目を閉じて満員電車を耐えている。触れる肌と肌、その体温を拒絶して。 「せーんせ」  そんなに怯えなくてもいいのに、と海は苦笑する。驚いて振り向いた宇都宮に駆け寄ってそっと肩に触れると、彼はその手を振り払った。 「あ、ごめんなさい先生。人の気配は嫌いですか?」 「……」 「満員電車、嫌いでしょう。そんな顔してもう人見知りどころではないですよね」 「……っ」 ”そう言うのね、ちょっとおかしいんだって。知ってた?”  海の言葉から逃げるように、宇都宮は下を向いて駆けてゆく……。

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