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3 「俺らの街食堂 3」

「……店長ってオレのこと好きなの??」  不思議そうにしているが、根の素直なサスケらしい率直なその問いに、一瞬店主が押し黙り、次には見たこともないような優しげな目つきでサスケを見るから、こりゃ本気だなとその顔を見た誰もが思った。 「抱き潰してめろめろに甘えさせてやりたいくらいにはな」 「ダメだってば!! サスケ! 無視しろ無視!」  そこにヒサシが無理矢理割って入るのを何人かが気の毒そうに見ていたが、本人は余裕がなくそれに気づくどころではない。 「えー……」  サスケはサスケでヒサシの言葉に不服そうで、そんなサスケにヒサシはまさかと顔を蒼くする。 「ヒサシ。人の恋路邪魔すると馬に蹴られるよ?」  食べ終わり様子を見ていたハヅキが真顔でヒサシを茶化すと、ヒサシがぐわっと叫んだ。 「馬なんざいねーしっ!」  蹴られてたまるかと言いたそうなヒサシに、ハヅキは冷めた口調で悪態を飛ばす。 「バーカ」 「んー……オレ、店長ならいいかも」  それと重なるように?気な顔ながら一応考えていたサスケが放った言葉に、一同がそれぞれにそれぞれの思惑を含んだ表情で、発した当人に注目した。  もちろん真っ向から反対の姿勢を崩さないヒサシが一番に声を上げる。 「! サスケ!」  ハヅキはニヤニヤと、ノブオとムラタ、それにテツオは単純に驚いて三人して「おお」と声を揃えた。  そして誘った店主はサスケの答えにご満悦で、気持ち悪いほどに機嫌の良い滅多にない様子に、周囲の客は若干引き気味である。 「決まりだな。んじゃ早速シケ込むか」 「……っ!」  エプロンを外しにかかる憎き店主のセリフに、ヒサシは絶句し、隣のムラタから憐憫の眼差しを送られる。 「今から? 店長、手え早くない?」  この街にいてその意味がわからないはずはないのだが、サスケはどこまでも無邪気で、そこにいる仲間から、こいつはこういう奴だよな、と改めて感心されていた。 「逃げられちゃかなわんからなぁ。ってことで後頼むぞ」  エプロンと頭のタオルを外した店主が近くにいた若い店員にそれを渡す。  それを受け取った店員にほんわか笑って「はあい。店長ガンバってねえ」と送り出されながら、店主はまだのんびり座っていたサスケの腕を取って立ち上がらせる。 「ほら、行くぞ」 「うん」  ワイルド風味の増した店主の後ろを素直について歩くサスケを、ヒサシが悲愴な顔で見送る。 「サスケぇ……」  二人の消えた先をいつまでも見ていたヒサシの肩をムラタが慰めるように叩く。 「はいはい。ここ奢ってやるから、そんな落ち込むな」 「展開早くない? まーいいけど。とりあえず酒飲む?」  ハヅキはもう興味は失せたとばかりに残った仲間に笑いかける。 「だな」  テツオが空になったコップを爪で弾きながら頷く。 「サスケの分残ってんじゃん。得した」  ムラタはまだ食べ足りないとその皿を引き寄せ、ハヅキが手を上げ留守を任されたばかりの店員を呼ぶ。 「バイトくーん、おかわりー」  それぞれのテーブルでそれぞれにまた、腹を満たし、酒を飲んで会話が盛り上がる。 「はぁい。ちょっと待っててえ」  のんびりとした店員の声を聞きながら、客達の話題が、もっぱら気のいい店主と若い男の関係がいつまでもつか、という下世話なものだったのは仕方のないことだった。
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