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第5話

「おにい!ご飯行くで」  そんな声に起こされる。 観光に行っていた家族はとうに帰ってきていて、これからレストランで夕食という時間だった。 声の主は妹の朋子。三つ下の二十七歳だ。  レストランはすでに多くの人で賑わっていた。空席を探すのも一苦労だ。 なんとか四人席を見つけ、陣取る。 ビュッフェ形式なので、何度も席を立たないといけないのが辛い。 そこへまた佐倉が姿を現した。 「椚田様、痛みはいかがですか?」 「ん、痛いわ。そんなすぐには」  こわばった笑顔で答える涼司。 「ビュッフェ形式では大変でしょう、お手伝いできることがございましたら何なりとお申し付けください」  一礼してさっさと行ってしまったのは、家族への配慮だろう。 「おにいあの人知り合いなん?」  目をギラつかせて朋子が食いついてきた。 「知り合い…っていうか、ここの副支配人さんやで」 「おにいってなんでそうイケメンホイホイなんやろな!まあ私はそれにあやかったわけやけど」  ふふふっと気味悪く笑う。  涼司がイケメンホイホイなのは、涼司がイケメンを探り当てているのだから当然のこと。 朋子の結婚相手も、元は涼司の友人。  ーーかつ、涼司の片思いの相手。 そんなこんなで、ついてない。  ついてない人間もいるもんだ。 白シャツに赤ワインぶっかけられるとか。 一人で裸足で砂浜歩いてて怪我するとか。 ついてない上に、ドジ?  一日の勤務が終わり、何時間かぶりの一本を咥える。 斜め上をぼんやり見上げ、煙を長く吐き出す。 撫で付けていた髪もぐしゃぐしゃと乱し、タイを緩める。 常に人の動向に気を配りながらの勤務は、神経を使う。 佐倉も自宅に戻れば、表の顔とは正反対の自堕落な出で立ちだ。 下着姿で、部屋をウロウロしていた。 適当な夕食を摂り、洗濯をしてシャワーを浴びればもう寝ないといけない時間になる。  がしがしとタオルで乱暴に髪を拭く、シャワー後の佐倉はまさにパンツ一丁。 缶ビールをプシュッと開けて、ベッドに腰掛けた。  ーー顔は悪くない。 好みのタイプというわけではないけれど。 スタイルだってそれなりだ。 人懐こく話しやすい人柄のようでもある。  …そんなこと考えて、何になるってんだ。  そう、彼もまた、ゲイなのだ。 それも、美少年食い。 なので、涼司はストライクゾーン外。  一気にビールを飲み干し、ベッドに潜り込んだ。
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