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第16話 14、さあ、授業開始だ!

「リヒト、ありがとう」  ジルは、リヒトの制服の裾をきゅっと握った。  僕の為に、シャルルくんにはっきり言ってくれたんだよね。ありがとう。  ジルは心の中で、もう一度リヒトに感謝を伝えた。 「俺がはっきりしたかったから。ジル以外、見てないってジルにも皆にも伝えたいからね」  そう言ってリヒトは微笑んだ。  うわ~。かっこいいな。  僕の番のリヒトはかっこよすぎ!  改めてジルは惚れ惚れしていた。  一方のリヒトはリヒトで感激していた。  ジル、ほっぺがピンクになってる!   可愛すぎ! ……よし、今夜こそ! ……脱童貞かっ!  など、邪な考えを悟られぬよう、爽やかな微笑みを保っていた。  朝食はパンに、ワイバーン(鷲・ドラゴン系)の卵のスクランブルと、ワイバーンの肉の燻製のソ―セージ。昨夜に続きなかなかゴージャスである。スープもおいしそうに湯気が上がっている。 「うまそ~!」 「うん、おいしそう」  二人は顔を見合わせ、微笑みあった。テーブルに着くと、 「さっきは大変だったな」  そうドニスに言われ、リヒトは苦笑で答える。そして早速二人も食事を始めた。 「おや? いつになくリヒトが浮かれてるな」  目ざとくクレスが言った。 「おいおい、野暮なこと言うなよ。初の同室だぞ? そりゃあ、なあ? リヒト!」  ドニスにも揶揄われるが、リヒトは脳内では舞い上がっているので、今回はあまり気にならなかった。 「フフン! いいんだよ、何とでも言え。今日の俺は心が広いかも」  リヒトが言うと、二人は笑った。 「成程! より一層の花畑か!」 「さよなら童貞君か? ハハ!」  それに赤面するのがジル。  恥ずかしい! うわ~、なんか番ってそういうこと?  一人悶えていた。 「おい、お前たち、見るな!」  その様子にリヒトは慌ててジルを隠すべく抱きしめる。 「っていうか、それもういいから!」  ドニスに苦笑交じりに言われるも、リヒトは抱きしめる。 「はいはい。ごちそうさま」  クレスにも冷めた視線を送られるが、リヒトはめげなかった。 「あの、リヒト、く、くるしい」  ぎゅうっと抱きしめられ、息苦しさのあまり、ジルは言った。 「ああ~、ごめん! つい!」  そう言いながらも、二人で笑いあう。  とにかく食べようと食事を始める。パンはふかふかでおいしい。次いで、ワイバーンの燻製ソーセージをパクッと食べる。 「……」  何故かリヒトに凝視される。  ……? リヒトはワイバーンの肉が好きって言ってたから、食べたいのかな?  そんなことを呑気に考えながら、ジルは、もぐもぐと咀嚼する。 「リヒト、今、変な事考えただろう」 と、ドニス。 「うっわ! いやらし!」 と、クレス。  二人に言われ、ハッとリヒトは我に返る。 「うっわ! 見るな! ジルの貴重な瞬間、見るなよ!」  リヒトのその言葉に、二人は冷ややかな視線を投げかけた。 「「……」」 「?」  よく分からないが楽しそうだなと、ジルは微笑ましく思いながら、もぐもぐと食べていた。  それぞれが、それぞれの想いを抱きつつ、そのままシメオンの部屋に向かう。 「おはようございます」  ジルが声をかけながら、入室する、三人もその後に続いた。 「ああ、おはよう。昨日いきなり三人からの要望に、慌てたよ。そうだ、一年の特Aの担任が青くなってたぞ。貴重な存在の三人が、いっぺんに飛び級とかありえないってさ!」  シメオンが笑いながら言う。 「まあ、そうでしょうね。いきなり三人がクラス替え希望だなんて、なかなかないですよね~」  あっけらかんとリヒトが笑って答える。 「まあ、僕たち三人は、飛び級蹴って一年に在籍していたし、いいんじゃないですか?」  ドニスも笑って言った。クレスも同様の気持ちの様で、笑っていた。 「後で特Aの担任にも、挨拶に行きますよ」  ジルを除く四人は、今後の事でワクワクしていた。しかしジルは、おろおろとシメオンと三人を見回していた。 「大丈夫ですか、先生。僕は一人でも」 「「「ダメ!」」」 「え?」  三人の迫力に、ジルは圧倒される。 「こんな面白そうなクラス、他にないからね!」 「それに課外授業の実践もあるし、その時にこのクラスだと面白そうじゃない? パーティーも組むんだし!」  ドニスとクレスが言った。 「俺たちがここを選んだんだ。ジルもいいよね」  リヒトもそう言った。 「……うん。みんなありがとう」  ジルはみんなの好意を素直に受け取った。 「じゃあ、一先ず、ジルの魔法と魔力の話からでいいか?」  シメオンはそう言った。 「はい。お願いします」  ジルも居住まいを正し、頭を下げた。  ドニスとクレスは基本的には、2年の特Aクラスで、実技の時はここに来るということで配置は収まった。リヒトはジルの事を考えた配置で、ジルと同じクラスだ。  ジルはそのままFクラスで、しかし未知数なものが多いため、ここでシメオンとその解明に時間をかける事も決まった。 「学園長がそう決めた。そのままをノベール家へ伝えている。ただ、ノベール家は以前の決定を覆す気はないようだ」  シメオンがそう言うと、ジルは、淡く微笑みながら答えた。 「そうですか。ありがとうございます」 「ジル、それって」  リヒトが心配そうにジルに話しかける。 「うん。あと数か月でお終いかな。でも最後まではきちんとするから」  例え、数か月後に除籍になり退学になろうとも、居てもいい間はきちんとやり遂げようと思っていた。 「その事なんだけどさ、いっそのこと俺の籍に入れない? そうすればもう煩わしいことにもならないだろ?」  リヒトが名案だとばかりに言っているものの、ジルはそれを受け入れる気持ちにはならなかった。 「……ありがとう、リヒト。でもね、学園長と父との約束だから。属性が出なければ二年の僕の誕生日に辞めるって言う約束なんだ。だから」 「いずれ俺と番になって結婚するんだから、時期が早まるだけでしょ?」  結婚?  ジルは今の言葉の意味を考える。  結婚って言ったよね? ……番うってことは……そういう事なのっ? 「ええええっ~!」  ジルは叫んだ。それを聞き、「ええええっ~?」と、リヒトも叫んだ。 「ちょっと待って! ねえ、ジル! ジルは俺と番になって結婚してくれないのっ?」  ジルの両手を取り、リヒトは叫んだ。 「えっ? 違う、違うからっ! そうじゃなくって! 驚いたの。番になるって事が、結婚するって事になるって事まで、考えてなかったから」  ジルは慌てて叫んだ。 「俺とが嫌とかじゃなくて?」  リヒトがジルを覗き込んでくる。 「勿論! 勿論だよっ! 僕もリヒトがいいから」  ジルとリヒトは見つめ合う。 「ジル!」 「リヒト!」 「コホン! そういうのは部屋でやれ。とにかく、もう少し様子を見よう。まあ、俺からもラオネに話しておくから。リヒトも親に話しておけ」  周りに人が居たことを忘れていたジルは、慌てて俯いた。 「そうする」  リヒトは全くそんな事には気を留めず、サラッと答えていた。 「なんか面白そうだな!」 「だな! やっぱ正解だな、この選択」  ドニスとクレスは、二人でそう話していた。 「……あの、でも結婚ってなると、いいのかな……リヒトのご両親は……」  ジルはおずおずと尋ねる。 「ああ、大丈夫! 全く問題ないよ」  リヒトは、カラッと笑って言った。 「俺もそう思うよ、ジルは心配いらないから」  シメオンもそう言った。  兎にも角にも、時期を見てどうするか決めることになった。しっかりとギュスターヴ家への連絡を忘れずに。さっさとシメオンが、ラオネに連絡を取る。リヒトも同じように連絡を取り始めた。 「……凄いね、魔法。僕にも出来るといいんだけどな……」  ジルはポツリと呟いた。
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