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第33話 3、無事解決(?)

「だって、だって。その、そういうことしている度に皆にわかっちゃうなんて、僕は恥ずかしいよ」  ジルはリヒトに必死になって説明をする。 「俺は別に恥ずかしくはないんだけどな。ジルはそんなに俺とのことがわかるのが嫌なの」  リヒトにそう言われ、ぐっと息を呑む。 「……嫌とかじゃないんだけど。あの、恥ずかしい、んだけど」 「そんなに気にしなくても大丈夫だよ」 「まあまあ。二人共、一旦落ち着こうか。ジルは恥ずかしい。リヒトは気にしていない。そういうこと?」  間に入ったシメオンの言葉に、二人は頷いた。 「コントロールの方法、教えてください!」  切羽詰まったようなジルに、シメオンは苦笑する。 「じゃあ、覚えるまで自粛したら?」  意地悪くそう言うと、リヒトが慌てる。 「それは無理! 絶~っ対無理!」 「じゃあ、恥ずかしいけど我慢したら?」  そうジルに言うと、ジルは首が取れそうなくらい首を振った。 「それは無理ですっ!」  シメオンは笑った。 「あははっ! 本当に面白い! ラオネ呼ぶか?」  再び意地悪く言うと、ジルは真っ赤な顔を更に赤くした。 「……じゃあ、もう、僕が魔法をコントロールするまで、なし!」 「えええええ~!」  リヒトはこの世の終わりのような愕然とした表情を浮かべた。 「あはははっ! 冗談、冗談。さて、ジル。本題だ」 「むう。本当ですか……?」  今までのやり取りでシメオンを訝しみながらジルは見た。 「ああ。本当だ。ジルの場合はリヒトの魔力の流れを感じるから魔法が出るんだ。それを遮断すればいい。強いて言うならばバリアみたいなものだ」 「……バリア?」 「リヒトとの流れを感じているものをシャットアウトする感じ。方法は人それぞれだけど、今のジルには出来ると思うよ」 「流れを遮断する……」 「そう。例えば思っていることが、今まではそのままリヒトに直通だろ? それも同じだけどね」 「そういうことですか」 「リヒトはリヒトで意識して魔法を抑える。お前は出来るな」  リヒトを見てシメオンは言った。 「はい。大丈夫です」  リヒトもほっと息を吐きだしながら答えた。 「……」  ジルは考え込んだ。  流れを遮断する。  リヒトと手を繋いでみる。確かに今、リヒトの魔力を感じている。  遮断する。 「……こんな感じですか?」 「まあ、そんな感じかな」  シメオンはなんとなくそう答えた。  今すぐコントロールすることは難しいだろう。何せジルの魔法はジルの気持ちに影響しているのだから。  そう。行為の際、ジルが果たして魔法を遮断することを考えられるのかどうか、だ。  恐らく無理だろう(笑)。  シメオンは内心ではそう考えていたが、敢えて言わなかった。  リヒトもそのことには気付いている様だが、黙っている。  それはそうだろう。ジルとの行為が出来るか出来ないかの瀬戸際だ。  まあ、その時は自分が魔法を抑えればいいと考える。 「じゃあ、ジル、そういうことだから」  安心してエッチしようねと、心の中で伝えた。 「うん。よかったよ。あ~焦った」  安心してにっこり笑うジルも可愛いなと、リヒトは呑気に思った。  ジルの悩みも無事解決(?)したところで、夕食の時間になった。 「じゃあ、明日はまたよろしくお願いしますね」  そう挨拶して、二人はシメオンの部屋を出て行った。 「まったく、おバカな弟を持つと気苦労が絶えんな」  そこにはラオネがいた。二人が出て行ってすぐに、タイミングを図ったように、ラオネが移転魔法でここに来ていた。 「まあ、そのくらい可愛いい弟なんだろう?」  シメオンはそう言うと笑った。 「まあ、な。あいつもあいつなりに苦しかった時期があったからな。その分これから幸せになればいいさ」 「そうだな。二人共これからが楽しみだな」 「リヒトは真っ直ぐ過ぎるからな。もっとわかりやすく相手を拒絶すればいいのに、それが出来ないから苦労する」 「ああ、確かにそうだな。お前の様に腹黒になれば、もっと楽なんだろうけどな」  ハハハと笑って、シメオンが言った。 「おい、それは俺のセリフだろうが。なに爽やかな先生やってるんだよ。俺から見れば、シメオンこそ腹黒だろうが」 「おいおい、ラオネに言われたくはないね」 「お前程腹黒い奴を俺は知らないぞ」  ラオネも笑って反撃する。 「まあ、お互い様ってところか」 「上手くまとめたつもりか」 「そうだけど?」 「先生なんて、ほんと、お前の柄じゃないのに、よく引き受けたなと感心していたんだよ。でも、ジルを見たらお前の気持ちがわかった気がするよ。ジルは何とかしてやりたくなるな。……全く。俺も大概おせっかいだな」 「確かに、ここまで世話を焼くお前を見たことはないな。リヒトに対してだけなら、ここまで世話を焼かないしな」 「……あいつら、どこまで伸びるんだろうな。楽しみだが末恐ろしいよ」 「そうだな」  二人はそう言ってほくそ笑んだ。 「ジル、キツかったら俺が」  抱き上げたいんだけどと、言いたかったが、ジルは吹っ切れたように笑っている。 「大丈夫! なんかいい感じ」 「そう? キツくなったら遠慮なく言ってね」  花畑な内心は隠しながら、爽やかにリヒトは笑った。   二人は並んで食堂に行く。食堂ではドニスとクレスが、ニヤニヤ笑って待っていた。 「祝、『卒業』だな(笑)」 「おめでとう(笑)」  二人の祝福(?)に、リヒトはふふんと得意げに答える。 「俺はやるときはやる男なんだ!」  また、この流れなの!  もう、いいよ~。やめてよ~!    ジルはまたまた赤面した。俯いて抗議する。 「あの光も最高だな! あれ、エーテル並みの光だろ?」  エーテル……? まさか。  ドニスの言葉をジルは疑った。  まさか僕にエーテルの魔法が出せるわけはない。  ジルはそっと顔をあげると、三人は確信したように頷きあっていた。 「え……? ほ、ん気で、そう思ってる、の?」  ジルは思わず思いが口から零れた。 「当然だよ。あれは改良すればエーテルだよ。癒やしの光」  リヒトが言うと、クレスが言った。 「あのままだとただの光でも、そこに水魔法加えればエーテルになるんじゃないの? やってみれば?」  そんな、さらっと僕にエーテルが使えるかもだなんて言わないでよ。 「無、理、だよ…… 僕に、エーテル、なんて……」  今まで全く魔法を使ったことなどなかったジル。リヒトと共にいることによって、やっと魔法が使える状態なのだ。それなのに最高峰の魔法であるエーテルを自分が使えるかもしれないだなんて……。  ジルは慌てて首を振った。  しかしリヒトは真面目な顔をしてジルに言った。 「ジルには出来るよ。ジルの魔法は出来るんだよ。俺はそう信じてる」  リヒトに言われ、ジルは息を呑んで三人を交互に見つめる。三人とも真面目な顔で頷いている。 「……僕は」 「大丈夫だよ。リヒトがそう言ってるんだから出来るよ。やってみようよ」 ドニスにも励まされる。 「……本当に、出来る、の、かな…… 僕に、出来るのかな」  僕はまだ、僕自身の魔法のことは、あんまり信じられないんだけど。  そう言ってくれる三人の、リヒトの言葉は信じられるから。 「出来るよ。ジルの魔法は俺の魔法。俺の魔法はジルの魔法なんだから」  リヒトに笑みを向けられ、そんな気がしてくる。 「……うん。僕は、リヒトを、みんなを信じてるよ。……やってみたい」  ジルはふふっと笑った。
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