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「女が好きなんじゃ?」 「べつに。興味ない」と柚希が僕の問いかけにさらっと答えた。 「こいつ、耀以外になんっも興味もたないの。HANTERの解散のときは、そりゃあもう、やばかったからな。大暴れで。また半殺しの刑で、解散理由を吐けって。12歳のクソガキが、26歳の大人を組み敷いて半殺しって。あり得ねえから」 「長瀬、弱いんだな」と俺はつぶやいた。 「ちがう! こいつが強いんだよ。身体はデカいし、力もあるし。で、ケイと白井のことを知って、犯罪を犯そうとしてっから。高校卒業するまで待てって止めたんだよ」 『僕は捨て駒で構わないって。全部、知ってる。わかってる。理解も納得もして、僕はここにいる。だから、一年でここまで這いあがってきた。あんたをぶちのめすために』  高校卒業するまで待て、か。それで、春臣にあんなことを言ったんだ。 「犯罪は犯すなっていうから。歌で。やるからには、桜庭さんの才能を取り戻せ、ともおじさんには言われた。だからわざと、新曲にキーの合わない曲を選んだ。ハルトさんも知ってる。そろそろやり時だろうって旗をあげてくれたのはハルトさん。もっと言うと、ケイの高音域は、僕も出せる。ただあいつの売りである高音域がむかついたから。出せないフリをした」 「ほら、こういう奴なんだよ。こいつは。計画的すぎで怖い。契約時のアレもこいつの考えだし」 「僕は8年待ったんだ。当たり前だろ。着実に落とさなきゃ意味がない」 「高音域だせる?」  俺は、眉間に皺をよせた。 「たまにまぐれで出たときあったでしょ? あれ、まぐれじゃない。調子がいいときでもない。普通に出せる。出せないフリをしてた」 「フリ?」 「そ。そこは母さんに教わった。習得までに時間はかかったけど。俺には8年の時間があったから」 「気づけなかった」  俺は口を緩めて笑った。すっかり騙されてた。高音域、出せるのか。まぐれで出ているのが、安定して出せれば音楽の幅が広がるって思ってたのに。 「……え? そこ? 重要なの?」  長瀬がぽかんと口をあけて、間抜けな表情になった。 「高音域が出せるんだぞ?」と俺は長瀬にもう一度言う。この感動は、長瀬には伝わらないのだろうか。 「だから、そこ? こいつはお前の熱狂的なファンで、ド変態で8年間ずっとお前を落とすことと、白井たちを突き落とすことしか頭にない、やべえヤツなんだぞ?」 「高音域が出るほうが重要だろ。トレーニングしなくても、出るんだぞ? 無理させなくても、歌がうたえるんだぞ?」 「そうだった。お前は、歌のために身体を差し出せるやつだったわ」  長瀬が呆れた声をあげて、ぺちんと額を叩いた。
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