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「強気でいられるのはいつまでだろうな? 綺麗な顔に傷でも出来たら、かわるかな?」 「傷? つけたきゃ、つけろよ」 「テレビに出る人間とは思えない発言だ」 「だから、興味ないって言ってんだろ。わかんねえ奴だな」 「なら、何に興味があってこの世界にきたんだ?」 「HANTER」 「とっくに解散したバンドだ」  白井が椅子から立ち上がると、僕の前に立った。僕の前髪をぐいっと引っ張ると、顔を無理やり上に向けさせた。 「狙いは? 長瀬に雇われたんだろ? お前のそのケイによく似た声で、耀を復活させろと。ケイに似たその雰囲気に声……誰が見てもお前はHANTERを思い出させる」  俺はちらっと白井を見てから、視線を逸らした。  ケイを思い出させる姿と声、ね。ムカつく言い方をしてくれる。桜庭さんの近くにいられるための武器なら、嬉しいけど。こいつに、いろいろ言われる材料にされるのは、腹立たしい。 「長瀬とどんな契約をしている? なぜこちら側に来ない? あそこにいてもケイ以上の存在にはならないことぐらいわかるだろ」 「興味ない」  ぐいっと髪をさらに強く引っ張られた。 「嘘をつけ」  わからねえ奴だな。興味ねえんだよ。そんなこと。  ケイ以上の人間になろうなんて思ってねえし。ただ桜庭さんの隣に立ててればいい。桜庭さんの近くにいられれば、僕は満足なんだ。  そのためにケイのフリをしろ、と言うならする。テレビに顔だししないで、歌えって言われれば、そうする。  僕は桜庭さんが思うように、僕を使ってくれるだけでいいんだ。幸せなんだ……真っ黒な欲にまみれたこいつにはわからねえだろうな。  純粋な僕の気持ちなんて。他は、何もいらない。興味なんてないんだ。 「あんたこそ、そろそろ本心を見せろよ。僕をどうこうしたいわけじゃねえんだろ? あんたの目的は桜庭さんただ一人……ちがう?」 「何を……言って」 「好きなヤツを虐めて喜ぶただの中年オヤジにしか、僕には見えないから。虐める度合いが酷すぎて最低だけど。僕も自分をなかなかの変態だとは自覚してるけど、あんたはもっと酷い。好きな相手を、ただ虐めて居場所を奪って、それで愛してもらえると思ってんの?」 「……クソガキが」  髪を掴んでいる手が離れたと思ったら、平手打ちが飛んできた。頬に痛みが走る。相手が手袋をしているから、そこまで激痛じゃないが。 「おぉ、でた。本心」と僕はニヤッと笑ってみせた。
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