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「お互いに告白はしてない、けど。想いあっているとは思ってた。移籍で裏切られるまでは」 「裏切られる?」 「そうだろ? HANTERを解散に追い込んだのは春臣だ。春臣が、お前を連れて大手事務所にいったから」  ケイがふっと笑った。まっすぐ前を見たまま、ケイが「ちがう」と首を振った。 「……たく。長瀬さんはやり手だな。なんで事務所を大きくしないのか。勿体ない。HANTERを裏切ったのは俺一人。白井は長瀬さんによって、解雇されたんだ。時期がかぶっていたから、白井が俺を連れて事務所にいった……って丸く収めたんだろうね。移籍したのは俺だけ」 「だって春臣はケイのマネージャだろ」 「解雇された白井を俺が拾ったから。全く知らない場所に一人で……よりは知った顔がいたほうがって思った。俺もそれなりに心がボロボロだったから。だから俺は、白井とはビジネス関係。安心した?」 「いや……いまは、もうどうでもいい、かな」 「だろうね」とケイが言ってから、声をあげて笑っていた。移籍してから、初めてケイと話をした。  昔と変わらない笑顔に、俺はほっとしていた。憎んでいた時期もあったのに、会って話をしてみると、憎しみはもう消えてる。ただ、取り残された悲しさと寂しさが少しばかり心の奥に残っている程度だった。  高層マンションの最上階に、ケイが案内してくれる。ケイが買ったマンションらしい。ここに柚希と春臣がいる、と。 「白井、入るよ」と家の中に入ったケイが、北側の部屋のドアをノックした。 「ケイ、今日も一人で現場に行け……と、耀?」  ケイの後ろから、俺も室内に足を踏み入れた。上半身裸で傷だらけの柚希が虚ろな目で、こっちを見ていた。 「柚希っ!」と俺は叫ぶと、ケイを押して柚希のもとへと駆け付けた。床に膝をつけて、柚希の顔を両手で覆う。殴られて腫れた顔が痛々しい。上半身についた鞭の痕も、ひどすぎる。 「桜庭さん、僕に触れないで。今、クスリでぶっ飛んでるから」 「え?」 「何しだすか、わかんない。桜庭さんを見ただけで、股間がやばい」と腫れた顔の隅間から笑みが見えた。  俺の視線が柚希の股間にいく。柚希のソレはズボンを押し上げている。  きつそう。触って解放してあげたい。  でもここでは、出来ない。ケイも春臣もいるから。 「へえ、やっぱり。そういう関係なわけ、か」  背後に立った春臣の低い声に、俺はゾクリと寒気が走った。怖い。おぞましい声だ。 「僕がね、一方的に。歌ってほしいなら、って脅したんだ。あんたよりもよっぽども、健全な愛のカタチだ」 「……黙れ」と柚希が頬を叩かれた。 「お前、耀を汚したのか」 「あんたが出来なかったからって、僕を責めるな」 「なんて奴だ。長瀬の野郎。とんだヤツを耀に……」 「ちょっと待て。長瀬は関係ない。柚希とのことは、俺が納得した上でやったことだ。最終決定権は、俺にあった」  俺の言葉を聞いて、春臣が眉尻をさげて悲し気な表情をしてきた。俺の顎を掴んで、膝を折って俺と同じ視線の高さになった。
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