新着レビュー
BLの枠に収めるのがもったいない作品
圧倒的な筆力。裏打ちされるのはもちろん、丹念に資料をめくられたであろう確かな知識だと思います。私は米軍について詳しくはありませんが、非常に説得力のある描写でした。とても熱心に資料を読み込まれたのだろうと思いますが、読者層を意識されてか難しい用語や凄惨なシーンなどは極力抑えられているため、軍事モノのカテゴリでも比較的読みやすい作品だと感じました。短いお話ではありますが、主人公の手記調に進むストーリーの中で見え隠れする傲慢さがとても人間らしく、魅力的です。惜しむらくは、この作品は、BLというくくりの中に置いておくのがもったいないと思われるところです。このような読み手を絞ったサイトで声高に申し上げることではありませんが、ぜひ、多くの層の読者に触れることを願います。
長い道のりの果てにたどり着く静かな場所
主人公伊織くんの成長を見守る物語であり、彼を取り巻く周りの人たちの心情にも泣かされるお話でした。
なかなか心を開かない伊織くんがもどかしくて苦しくなるくらい密なストーリーです!そして、長い道のりのなかでほんっとーに少しずつ変わってゆく様子が繊細に書かれていて、心がずきずきします。
色々な経験をし(させられ)る総受け主人公の伊織くんですが自分の感情をどこかに置きざりにしているようで、誰に何されててもエロいけど悲しい。
なぜか彼に惹かれる人たちが彼を傷つけてしまうところは、伊織くんがそれぞれの人の苦しみや罪を背負う形代になっているようでした。
静かで穏やかなラストまでずっと心を掴まれる素敵なお話でした。