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エクセリアでの生活

テオドールの言った通りに翌日にはヴァレリー用の衣装を用意するため採寸が行われた。 ただ衣装ができるまではドレスを着るしかない。ブリジット用ということで、丈は少し短めであったが、実際このドレスはブリジットには着れなかったんじゃないだろうかとふと意地悪なブリジットの姿を思い出した。 夜はもちろんのこと、昼間もテオドールに会うことは無かったが晩餐だけはテオドールと二人でいただいた。 「何か必要な物や欲しいものはありますか?」 「あの、それでは本をお借りできれば」 「本?」 「はい、ダメでしょうか?」 「いや、問題ないですよ、あとで書庫へ案内させます。鍵もお渡ししますので好きに使ってください」 「ありがとうございます」 うれしさについ顔がほころぶ、そしてうれしそうにしているヴァレリーをテオドールは優しく見つめていた。 テオドールとの食事が終わり自室へ戻るとバルコニーにでる。 今まで小さな窓から見える岩山や海がヴァレリーの世界だったが、活気のある大きな街並みさらにその奥に見える広大な土地その国の美しさに見惚れていると海からの心地よい風が吹いてきた。その風にあたりながらぼんやりとしていると部屋の扉をノックする音が聞こえた 「はい、どうぞ」 そう声を掛けると執事が 「失礼します王より書庫への案内を言い使ってまいりましたのでご案内します」 つい先ほど話したことをすぐに手配をしてくれるテオドールに感謝しつつついていくと美しい装飾の扉の前で一本の鍵を手渡される 「そちらはヴァレリー様の鍵になります」 どうぞとうながされて鍵を開け部屋に入ると壁一面天井まで本が整然と並べられていた。 どうやって上の方の本を見るのだろうと近づいてみると壁は階段状になっていてどれも手が届くように設計されていた。 蔵書の種類なども豊富でそれでいてわかりやすいようにきちんと分類されていた。 興奮しながら部屋中を見まわしていると 執事が 「ヴァレリー様に何かございますといけませんのでこの部屋に入る場合は必ず鍵をお締めくださいとのことです。」 「解りました、室内に入ったら鍵を閉めればいいのですね」 「さようでございます」 「そしてこの書庫の鍵はヴァレリー様の鍵と王がお持ちになっている鍵の二本のみとなっております。」 「えっ?」 「ここには代々受け継がれております貴重な本もございますので王と王妃のみがこの鍵を持つ資格がございます」 「そんな大切な鍵を僕が持っていてはいけないのでは?」 「ヴァレリー様は王の婚約者であり王妃となられる方です、なにより王がヴァレリー様に預けましたので十分資格はございます」 ヴァレリーは恐縮しながらもテオドールの優しさを感じ取って胸が熱くなった。 「ここの蔵書はヴァレリー様がお好きにしてくださいとのこと、ただしあまり夜更かしはなさらないようにとのことです。お部屋にお持ちになっても良いとのことでした。」 「それでは、わたくしはこれにて」 「わたくしが外にでましたら鍵をかけることをお忘れなく」 「あっ。はい」 執事がお辞儀をして出ていったあと鍵をかけて改めて部屋を見まわすと 寝心地によさそうなソファとテーブルのセットが置かれていて、壁一面は本が並べられているのに手持ちのランプだけでも明るいのが不思議でふと天井を見上げると、吹き抜けの天井は明るい色のステンドグラスとなっていた。 月の光をあびつつ蔵書のタイトルを見ていくとエクセリアの歴史や風土記のようなものがあり、とりあえず二冊ほど手に取り自室へもどる天蓋付の大きなベッドに一人、本とともにもぐりこんだ。 朝、気が付くと本を抱いたまま眠っていた。 テオドールに早くお礼が言いたかったが、朝食は部屋に運ばれてくるので会えない、食事のあとはすぐに書庫にこもり蔵書を一冊づつ手に取って見ていった。 どの本も装丁が素晴らしく、金箔を使ったものや木彫りで出来たものなど装丁をながめているだけでもちょっとした美術品をながめているようだった。 待ちに待った晩餐の時間、別にお腹が減って早く食事をしたいというわけでなく、テオドールと会えるのが晩餐だけなのでこの時間が待ち遠しい。 「テオ、さっそく書庫を使わせていただき、さらに鍵までお貸しいただきましてありがとうございます。」 テオドールはにっこりとほほ笑んで 「気にいっていただけたのならよかった。その鍵はヴァルあなたに差し上げたものです。好きにしていただいて結構です。」 食事の合間すこしだけテオドールとと話ができるこの時間がヴァレリーには幸福で温かいきもちになるが、部屋に戻り一人になると急にテオドールとの距離を感じてさみしくなる。 昼間は書庫、夜はテオドールとの食事、その後は部屋で本を読む。 バルコニーに出てうっすらと塩の香りのする風にあたる 「テオは晩餐以外の時はどこで何をしてるんだろう」 なんとなく声に出していってみた。 もちろん国王としての政務は忙しいと思う、だけど夜はどこにいらっしゃるんだろう。他の妃の元にいるのだろうか。テオの国でテオの近くに居られる、それだけで幸せだけどやはりさみしい。 エクセリアに来て一週間ほど経った頃いつものように書庫へ行こうと思い部屋を出てみるが、部屋と書庫とダイニング以外知らないことに気づいてふと城内を見て見たくなった。 アルべニア城とは比べものにならない広い城ですっかり迷子になってしまい気づくと城門のちかくまで来ていた。 エクセリアは主にイヌ科獣人により形成されているが人間やその他の獣人も街に住んでいるため商談などで城内にも人間がいることもありヴァレリーがウロウロしてるところで怪しまれることは無い。 さらに、エクセリア王が人間と結婚するという話は国中の民が知っていたが、婚礼の儀はまだ行われていない為、ヴァレリーが婚約者であることは知られていなかった。 その為、容易に城の外に出ることができた。 活気あふれる街に心をはずませキョロキョロしていると背後から何かが勢いよくぶつかってきた。 ヴァレリーは前のめりに倒れ手をついた時に左手の掌に傷ができ血が滲んでいた。 呆然としていると、 「うわー!!大丈夫か?」 という声を掛けられ振り返るとヴァレリーよりも小さい少年のオオカミが立っていた。
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