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GOGO!城下町 1

陛下との謁見後、3日ほど経ってから城下町へ行くことになりました! ダリウスの都合が付かなかった様です。忙しいなら他の人にしてくれても良いのに…。 今日は貴族の子息風の装束です。庶民と同じにと言ったら、護衛付きの庶民なんか居ねぇよ、ってダリウスから伝言が来ましたです。 なので、白いシャツに濃紺のベストにパンツです。襟にレースのヒラヒラしたタイも付けてます。いつまで経っても慣れないな。 でもフード被るからまだマシかな。ベストとお揃いのフード付きマントで隠す。今日特にボタンやブローチなどに魔石を組み込んで、風魔法で涼しくなる様にしたり、身を守る術が複数かけられてるそうだ。お貴族様仕様か。そりゃ高そう! まぁ、城下に行けば普通の市民の格好が分かるし、お金も持ったから買って帰ろうと思う。 ダリウスとは午後に騎士棟で待ち合わせ。馬車で送って貰うと、そこで待っていてくれた。他にはウォーベルト、ラドクルト。 おお、今日はみんな騎士服じゃなく、俺みたいなシャツと革鎧で落ち着いた感じた。でも帯刀はしている。編み上げブーツもかっこいいね。 知らない騎士さんが他に3人もいた。全員近衛騎士なんだって。多すぎない?今日の侍従はノーマだ。エルビスはダリウスの代わりに歩夢君に呼ばれていた。渋々向かってましたよ。 「こんにちは、今日はよろしく。」 「おう。まずは今日の約束事を歩きながら話すから、しっかり聞いてくれよ。」 歩きながらなのは、かなーり出口まで距離があるからでした…。いや、端から端まで歩くから仕方ないんだけど。 多分、王族専用隠し通路はどこかにあるんだろうな。これで時間稼ぎするんだろう。 どれくらい距離があるかというと。 そうですね、大型イベント会場に打ち合わせに行ったら、駅からイベントフロアまでが、めっちゃ遠い!!と驚愕して、キャリーカート握りしめて走った時と同じ位驚きましたね。 走って5分以上かかりましたよ。キャリーあったからね。 ええ、経験有るんです。以来遠出は15分前行動です。 気をとりなおして、移動の間に言われた事。 1、ダリウスから絶対に離れない事。 2、フードは取らない事。 3、話しかけられても、護衛が確認する まで声を出さない事。 4、万一の時はダリウスに全面的に従う 事。 特に4。例え誰かが助けを求めていてもダリウスと逃げる事、と何度と言い含められた。 「最悪暴れたら、殴ってでも連れて逃げるからな。大人しくしといた方が良いぞ。」 「分かった…」 ヒグマパンチ怖いです。 俺の中ではイケメンヒグマ認定されてます。 ゴリラの称号はハンスの物だから。 さぁ、出口まで来ました!既に結構歩いたね。ドキドキだ。とうとう本当の外に出る。 門兵とダリウスが話し、ギイィと音を立てて大きな城門が開いた。 そして、馬車に乗せられた。馬車に乗る時、目線ギリギリまでフードを被せられた。窓から見えるからって。うぅ、見えにくい…。 上を見る時はフードを手で押さえて脱げない様に気をつけよう。 「おぉ~石造りの街並みだ!映画みたいだ!庭がデカくて家が見えないな…」 そこには石とレンガの街並みが広がっていた。まだこの辺りは貴族の邸宅ゾーンだとか。うん、庭が広いです。門から家まで何分コースの家かな。 市民ゾーンまで距離があるし、貴族街って歩かないんだって。どんな短距離でも馬車移動との事だった。セレブか?ああ、リアルセレブでしたね! 騎士は馬らしいけど、今日はオレが居るから馬車。次の門まで馬の人もいるけど。俺のせいで悪いなぁ。 大きな邸宅が徐々に小さめの邸宅になり(それでもかなり大きいけど)、さっきより小さめな門と塀があった。貴族ゾーンって塀で囲われてたんだね。ダリウスよりも高い塀だ。やっぱり防御の為だろう。 門の所で馬車を降りて、ここからは本当に市民ゾーン。ワクワクする。 「いきなり凄い活気だ!あ、あれ何の店?」 走ろうとして、左腕をダリウスに掴まれる。 「一人で行くなと言ったろう。」 「うう、ごめん。ね、あの店見ても良い?」 指差した先には布や宝石らしき物が奥に並べられている。 「宝飾品が好きなのか?」 「俺、元の世界で商人だったんだ。だから、この国の売れ筋は知りたい。」 「分かった。ここは知り合いだから大丈夫だ。」 「え、そうなんだ。」 ドアが開くと、カランとベルが鳴った。年配の白髪交じりの男性が、作業の手を止め声を掛けて来た。 「いらっしゃいませ。おや、坊ちゃん。」 「「「坊ちゃん?」」」 「それは止せ…」 ダリウス坊ちゃんか!こんなでっかくても坊ちゃん…可愛いじゃないか。 年下だしな!気恥ずかしそうにしてるのが可愛いぞ、坊ちゃん! 「は、ここの店常連な感じ?」 見上げながらニヤニヤしながら揶揄うと、ちょっと頬を染めていた。クックック。 「ジュンヤ!」 店内について来た2名の騎士も笑いを噛み殺している。いっそ笑った方が楽になれるよね。 そういえば、よく見えないけど、聞いた事がある声の気がする…。 「ホッホ。坊ちゃん、誰かと訪うなどは珍しいですな。恋人ですかな?」 「揶揄うな。店内が見たいというから連れてきた。グレン、先に言っておくが驚くなよ。噂の男だ。 ジュンヤ、ここではフードを取っても大丈夫だ。」 そう言ってフードを取ってくれた。 「これはこれは…。渡り様に再びの拝謁が叶い光栄でございます。」 片膝をついて礼をされてしまった。そう、服を仕立てる為に離宮に来てくれたのがこのおじいさんだったのだ。ダリウスは知らなかったんだね。 「俺はただの人ですから、普通にお願いします。ジュンヤと呼んでください。先だってはありがとうございました。 お忙しい中申し訳ないのですが、店内を見せて頂けますか?」 「どうぞごゆっくりご覧ください。」 俺は仕立て前の生地の手触りなど見せて貰った。貴族の服はシルクが多い様だ。だが、暑い国なので部屋着にはリネンも使用されている。ただし、貴族のリネンは極上の糸だ。 「グレンさん、こちらは貴族向けのお店かと思いますが、糸や生地の工房などは見る事が出来るでしょうか?」 「今日は無理ですな。工房のある街へは馬で2日ほどかかります。」 残念。でも、いずれ行きたいな。ここの工房はお針子さん達が、せっせと刺繍や仕立てる為に手縫いをしている。ミシンがないから仕方ないし、昔の物は手縫いだからこそ出来た物もあるんだ。 あ、黒い布がある。珍しい。しかもシルクだ。 「やはり気になりますかな?」 「ええ。刺繍糸の黒は見ましたが、着ている方は見なかったので。」 「黒は祝いの色です。婚儀に使われるのですよ。」 「えっ、そうなんですか!」 黒って喪に服す色のイメージだけど…。 「神子の祝福の色でございますから。庶民は全身黒は無理なので、一部に取り入れるんですよ。この髪飾りの様にですな。」 「なるほど…」 「ジュンヤ様、こちらを当ててみて下さいませんか?」 グレンさんはそう言って黒の生地を俺の肩に掛けて、鏡を見せた。 そうしてみると、俺の髪より明るく、漆黒と言うより墨黒位だと分かる。完全なる黒は染色が難しいのだ。 「やはり、真の漆黒には負けてしまいますね。更に工夫しなくては。」 「難しいんですから、充分に思えますが。」 「職人という者は貪欲なのでございますよ。機会があれば漆黒の御髪を見せてやりたい位です。」 「俺が城下で暮らす様になったら、是非紹介して下さいね!」 「城下に降られるおつもりなのですか?」 グレンさんが首を傾げる。何でみんなそんな顔するんだろう。 「いずれは、」 「ジュンヤ。」 おっと、これ以上はダメって事か。 「まぁ、いつか出るって事で。」 後は宝石を見せて貰った。貴族向けの商品と庶民向けの商品は考えたいしな。石のサイズがデカイ。 あっちの世界的には研磨とカットで更に輝きそうだ。 色々見せてもらい、グレンさんの店を出た。貴族街近くからの離れると、家も歩く人々も親近感のあるんだ雰囲気になってきた。 屋台で肉の串焼きを食べたら、塩とスパイスが絶妙なだった。コレなら美味しいぞ。 「ダリウス、コレ美味い!スパイスはどこで売ってるのかなぁ。」 「お、坊や気に入ったかい?スパイスショップはこの先さ。配合は教えてやれないけどな!」 「坊や…」 俺は愕然とした。 さっきのダリウスの坊ちゃんと何が違うのか。 「スパイスショップ行ってみるか?」 ワザとフードの中の顔を覗き込みながら言うダリウスの顔は、悪~い笑顔だった。仕返しか!ぐぬぬ。 「行く…」 コレは引き分けだ!負けてないからな! スパイスショップは楽しかった、めちゃくちゃ色々買ったけど、乾き物だから軽かった。自分で持とうとしたのに、ノーマが袋を掻っ攫っていった。おれ、ちゃんとバック持ってきてるのに。 他にも食べ歩きを楽しんだ。シンプルだけど、バリエーションはあった。甘いものは高級品らしい。やはりそうか。 砂糖の安定供給が鍵だな。砂糖で一儲け出来るかも!! 次はノルヴァン商会。ダリウスに聞けば、城下一大きな商会だと言う。入り口のところに、ガラスをはめ込んだディスプレイスペースがあるが、ちょっと惜しい。ただ並べてるだけな感じだ。 「こんにちは。ノルヴァンさんはいらっしゃいますか?」 入り口の店員さんに声をかけると、不審者を見るような目で見られた。確かにフードで顔見えないから、怪しさマックスですよね… 「あの、ペンを買い取って貰った者なんですが…」 「ああ!あの魔法のペンですね!主人を呼んで参りますので、少しお待ち下さい。」 突然凄いスピードで裏へと駆け込んだ。まもなく、ノルヴァンさんがにこやかに出てきた。 「ジュンヤ様、わざわざのお越しありがとうございます。こちらのお部屋へどうぞ。」 そういって、奥の応接室の方へと案内された。店の外に3人待機し、店内に二人、応接室に入ってダリウスが付いてきた。 「護衛がダリウス様とは、さすがジュンヤ様だ。」 「分不相応とは思うのですが、ありがたい事です。」 「ジュンヤ、魔法のペンとは何だ?」 あ、見せてないか。バックから取り出して、手帳に書いて消してみせると目を見開いていた。 「今日は、買い物がしたくて来たんです。庶民の標準的な服を何着か欲しいのですが。」 「どなた用ですかな?」 「俺です。」 「えっ!ジュンヤ様がそんな物を着てはいけません!」 またこの会話か…。そして神子じゃないしのくだりを繰り返すのだった。 ついでに、俺は既製品なら子供服だと言われました。泣いても良いですか? その後店内を見せて貰っていると、薄いブルーでそこそこ良い生地が奥の方に山積みで売られていた。 「これ、価格の割に良い品質ですね。」 「分かって頂けますか!そうなんです!織りで美しい模様が出ているのに、なかなか売れないのですよ。」 そりゃーそんな隅に畳みで置いてたら、なかなか気がつかないよ。 「少し、試してみたい事があるのですが良いですか?今一番売りたい商品はどれですか?早く在庫処分したものとか。」 「そちらの布と、こちらの筆記具セットですね。あとは、この髪飾りです。」 「飾り扉のディスプレイを触ってもよろしいですか?」 「はい、もちろんです。」 ダリウスにはお茶でも飲んで待っててと頼んで、ディスプレイだ。この世界であちらのディスプレイが通用するのか、腕の見せ所だな。 俺は飾り扉にあった仕立て用の布や高級ジュエリーなどを一旦全部外し、ブルーの生地を立板にかけた。そしてドレープを作っていく。 あ~!フードが邪魔!一応髪は隠れる位のギリギリの位置にあげた。本当は脱ぎたいけど怒られそうなので耐える。 薄手の美しい生地に織り込まれた模様が美しく浮かび上がっている。これは畳みでは良さが分かり難かったと思う。ドレープを入れる事で立体感も出た。 帽子スタンドなども借りて、ブラウスに見立てた生地に、ウイッグもあったので髪飾りをディスプレイしていく。婦人服売り場での研修ありがとう! しかし、男性でも髪飾りするんだね。 髪の長い人が多いからかな。庶民でもデートとかでお洒落に気合を入れる時に使うんだって、嫁側が。 プレゼントもするんだって、旦那側が。 飾り扉の中で立ったり座ったりしつつ、生地、筆記具セットと髪飾りを引き立てつつ、ついで買いして欲しい少額、高額商品も混ぜつつコーディネートして並べてみる。 一旦通りに出て、離れたところから飾り扉をチェック。見えにくい所や物足りない所を修正して、を何度か繰り返していた。最終のチェックの為通りにいたら外待機の騎士がダッシュで向かってきた。 そういえば急に人が増えたな。飾り扉見てくれてるのか? 「ジュンヤ様、中へ。」 小声で背中を押される。なになに?? 店内に入るとダリウスが仁王立ちでした。阿吽の像に似ている。 「なんでフードを取った。」 「えっ?」 頭に手を取るとフードは脱げていた。 「ごめん、脱げちゃってたみたい。」 振り返ると、ガラス戸越しに人がみっしり見えた。ヒェェ~! 「神子と勘違いされてないかな?」 「それは大丈夫だ。神子はしょっちゅう街歩きをしているからな。フードなど無しで。だが、もう1人いるという話をやたらしていたから、お前がそうだとバレたんだろう。」 「俺の話してたんだ?どんな話?」 「...まぁな。言われるだろうから俺から話しておくが、巻き込まれたお兄さんだと言っていたな。街では”おまけのお兄さん”と言われているようだ。」 すっごいイラついた口調で言ってます。まぁ、確かにムカつくけどさ。 「事実だからなぁ。」 「万一妙な奴がいても堂々としてろよ。」 「うん、ありがとう。」 「ジュンヤ様、よろしいですか?私は外から見てみます。ついでに蹴散らしておきましょう。」 と、ノルヴァンさん。 「ディスプレイ、気に入っていただけると良いのですが。あの人達も飽きたら行くとは思うんですけど....商売の邪魔ですよね。この際俺を利用してバンバン売っちゃいましょう。今こそ在庫整理のチャンスですよ!!ノルヴァンさん。」   人寄せパンダ上等!俺はニヤリと笑った。それに答えてノルヴァンさんもニヤリと笑う。お互い商売人だ。目と目で心は通じ合うね! 「おい。」 「あ、ダリウス、心配ありがとう。でも、久々に俺の本業やりたいんだけど、護衛を頼むよ。信頼してるからさ。」 ダリウスはため息をついて、部下たちの配置などを指示をした。 「仕方ない。ノルヴァン、入店人数を決めて入店させても良い。10人ずつだ。ジュンヤ、お手並み拝見といこう。」 「接客久しぶりだなぁ~。頑張るよ。」 時に人はその場のノリで物を買ってしまうが、買い手が後悔しないよう様に売ろうではないか。   そして、カランとベルが鳴り、騎士に誘導されたお客さんが入ってきたのだった。
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