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第8話

「春樹。おいで」  授業が終わり、昼休みに大塚が僕を呼ぶ。 「うん……」 「座って」  膝をポンと叩く大塚。  え? 大塚の膝に座るの?  ちょっと、いや、かなり恥ずかしい。 「どうしたの? 春樹? 僕、足腰を鍛えてるから、君に座られるぐらい、平気だよ?」  もじもじとしていると、立ち上がった大塚に捕まって、強制的に膝に座らされた。  正面に石田の顔がある。  一年のチャラそうなイケメン代表の石田は、間の抜けた顔をして僕を見ている。  僕は恥ずかしくて顔を隠した。 「肉食動物に捕食されそうになって怖がってるウサギみたいじゃん。まだ懐いてないみたいだし、やめろよ」 「餌付けしたはずなのに、おかしいな……?」  僕、小動物みたいに思われてるし! 「コミュニケーションがまだまだ足りない感じかな? 警戒してる。まず、撫でて話しかけて」  大塚と石田、僕の事を小動物みたいに話してる。 「春樹。ご飯はまだかな? 君の好きな物を作ってきてあげたよ。特別製のパン粉とソースで作ったとんかつ。おからコロッケもあるよ」  町田を睨んでいた時がウソのような、猫なで声を作って僕の頭を撫でる大塚。  左手で僕の背をなでなでしながら、右手ではしを掴み、コロッケを食べさせようとする。 「自分で食べるから!」 「だって」 「餌付けしたかったなー」  僕は大塚の膝に座ったまま、割りばしでコロッケを食べた。  これだけでもじゅうぶん、恥ずかしい。   同じ教室で昼食を食べている奴らが、好奇の目で見ている。 「ごちそうさま」 「え? もう食べないの?」 「自分のお弁当があるから」 「そっか。春樹、明日僕らは部の試合があって、遠征する。けど、君は体調がすぐれないし、世の中の男はろくなことを考えていない奴が多い。家で良い子にしてるんだよ」  頭をなでなでしながら、小さな子供に話しかけるように大塚は僕の目を見て話した。 「うん……」 「良い子だね」 「目の毒だなー」  石田は冷やかそうとしたが、 「よく言うな」 っと、大塚は石田の私生活をなにか知っている様子だった。

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