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第9話

「では、次は第三外国語だから」  大塚はアラビア語を選択してるけど、そんな難しい言語を僕が選ぶはずがない。  当然、別の教室へ。 「おーい。竹内、西田!」  石田が僕らを追ってきた。 「石田はアラビア語じゃなかった? 早くしないと、大塚にノート見せてもらえないよ?」  竹内に塩対応されても、彼はめげない。 「優也はああ言ったけど、西田、優也の試合を見たくない? あいつ、今村君がスタミナ切れしたら、フォワードで出場するんだ。バンバン、シュートを決めるから!」 「けど、家にいるようにって……」 「しかも、試合には白川君と今村君も出るんだよ! ゴールデンコンビ!」  この前、サッカー部の練習をみにいった。  一年対二年の練習試合をしてた。  ミッドフィルダーの二年の白川さんがフォワードの二年の今村さんにパス。  シュートは見事決まり、二人は熱い抱擁を交わした後、軽いキス!  二人の周りをハートマークが飛び交い、グラウンドが花畑になったような錯覚を起こした。  なんだ、W大、来て良かったじゃん!  発作を起こすようになって、前の学校に居ずらくなって、外部受験したけど正解じゃん!  しかも、あの二人は学年違うから、倒れる奴がいたって気が付かないじゃん!  僕の頭の中をBL妄想が駆け巡った。  良い物が見れたな!  シュートを止め損ねて地面を殴りつけた大塚を無視して、僕はあの二人に夢中になっていた。  見たい!  あの二人のチューがもう一回見たい!  僕はおかしいのだろうか。  恋人がゴールを奪われたりしてるのに、BL妄想で頭がいっぱいとか。 「石田? 変な事、西田に吹き込まないでよね?」 「行きたい! 場所どこ?」 「じゃあ、君とライン交換したいな♡」  僕は石田のトラップにあっさりと引っかかってしまった。 「西田、大丈夫なの?」 「竹内がついて行ってやればいいじゃん」 「僕バイト、入ってるんだけど!」 「そんなの友達のために休めって」  サッカー部の試合会場は、海がキレイな場所の近くだった。 「来て良かったなー」 「知らないよ? 大塚、怒ると思うよ?」 「ごめん。バイト、休ませて」 「別にいいよ。僕も白今見たいもん!」 「さすが、わが友!」  見たかったんじゃん! 竹内も。 「えっと……試合会場はこっちかな」  竹内が地図を見て、試合会場に向かっていく。  僕は後をついて行った。  試合会場の入り口で、F大学のサッカー部員らが集まっていた。 「あれが対戦相手かな?」 「よお。春樹じゃん」  聞き覚えのある声と見覚えのある顔。  その男は近づいてくる。 「大吾(だいご)?」  大林大吾。  高校時代の同級生で、数少ない外部受験した仲間の一人だ。  彼は素行と成績が悪くて、エスカレーター式で上がれるはずの大学に落ちたんだろう。 「終わったら、どっか行こうぜ。外部の学校、くそつまらん」 「え? 僕、友だちと一緒なんだけど?」  大吾は竹内の手を掴んだ。 「手、バンドエイドだらけ。学費払えなくて働いてんの? 君が春樹の友達?」  竹内は傷ついたように俯き、大吾の手を振り払った。  来るんじゃなかったと初めて後悔した。  大塚の言う通りだ。  僕の昔の同級生で、特に外部受験した奴にろくな奴はいない。  僕本人ではなく、竹内が酷い事、言われるなんて。 「行こう。竹内」 「春樹さ、高校生の頃は物凄い童顔でお子様扱いされてたのに、少し垢ぬけた? 飲みに行こうぜ」 「僕ら、まだ未成年だよ!」 「うっさいな!」 「君さ、そういう所が先生方に嫌われたんだよ」 「黙れよ!」  拳を振り上げた大吾に、僕は手で顔をガードして目を閉じる。  が、拳は僕に振ってこなかった。 「春樹。何してるの?」  普段は甘く可愛い声が今は少し怒りに冷たい響きを帯びていた。  サッカーユニフォームを着た優也は間近で見ると、カワイイけど少しだけエロく見えた……。  僕は腐りすぎているんだろうか? 「離せ!」 「スポーツ選手が、アマチュアに暴力振るうなんて、最低だね。通報したら、君の学校、公式戦に出られなくなるよ?」 「くそっ!」 「おまえ、何やってんだよ!」  大吾はチームメイトたちのところに逃げ帰り、上級生に怒られていた。 「ありがとう、大塚」  竹内は作り笑いを浮かべてお礼を言う。あ、ここはお礼を言う場面なんだ! 「ねえ、春樹。僕がお礼が言ってほしいわけじゃないの、分かるよね?」 「え……?」 「試合が終わったら、お仕置きだから!」  め、目が笑ってない。  こ、怖い……。  けど、後で、イヤらしい事をされちゃったりするんだろうか?  これで僕も、童貞卒業♡  ちょっと、いや、かなり楽しみ……♡  やめて、優也! お願い、許して! とか言いながら、泣いてるふりして、美味しく優也をいただいちゃおう♡  なんて、ドMっぽく考えていたのは、甘かった……。  僕は試合会場近くのドラッグストアの中にある、コスメ売り場に連れていかれた……。

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