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12 輪廻転生②

 酷い熱さと息苦しさを覚えて、荒々しく息をつきながらゆっくりと目を開く。一瞬、目の前の光景と、たった今の今まで見ていた景色がだぶって見え、軽い眩暈がした。 「っ……」  額に手を当てて深く深呼吸をし、なんとか持ち直したところで部屋を見渡す。そこには変わらない騎士団員の俺の部屋があった。 「俺、は」  蘇った記憶の中で、自分が晴れの神エウディアーだったのだとはっきりと自覚した。今のエレンとしての自分は、ケロスが天界から追放して、人間として生まれ変わった存在だ。  そして、間違いなくヒューエトスの生まれ変わりは。  「あ、つい……」  Tシャツを摘まんで扇ぎながら、やけに眩しい気がして窓の外に目を向けた。その途端、空を目にした俺は瞠目する。 「えっ……」  思わず窓辺に走り寄って窓を開け放ち、もう一度しっかりと空を眺める。そこには、いつも当たり前のようにあった曇天がなく、代わりに抜けるような青空が広がっていた。 「う、そ……」  目が眩むような光の先に目を向ければ、記憶にあるのと違わない太陽が確かに存在していた。ずっと目にしていたい光景だったが、頭の中に声が響いて焦燥を掻きたてられた。 「思い出してしまったようだな。そなたに引きずられて、あやつも思い出そうとしている。いいか、過去の過ちを繰り返さないためにも、決して近寄ろうとするな」 「近寄るなって、ヒューネルにってことですよね?でも、近づかないことだけで解決する問題じゃなかったからこそ、あなたは俺たちをわざわざ、記憶を奪ってまで引き離した。そうじゃないんですか?」 「そなたたちが、互いにばかり目を奪われて、周りのことを一切気に留めなかったからだ。こうして引き離したのは一度ではない。覚えていないだろうが、何度も何度も、そなたたちは私の手に引き離されたというのに、その度に必ず互いに気がついてしまった。ただ、完全に過去を思い出したのは今回だけだ。やはり、互いを深く想い合ってしまったからだろう」 「俺たちは、どうしても離れないといけないんですか?他に何か方法は」 「ないこともないが、あれをすれば、そなたたちが消滅する危険性がある。だから、私はそれ以外の方法を取るしかあるまい。さあ、目を閉じよ。今一度そなたたちの記憶を消し、引き離して……」 「ちょっ、待って下さい。せめてもう一つの方法を!……っく、急に強烈な眠気が……っ」  抵抗しようとするも、強硬手段に出ることにしたらしい王、いや天候の神ケロスが、俺を眠りの底へ誘おうとしてくる。 「嫌だ、俺はもうヒューネルと引き離されたくない!ヒューネル、助け……っ」  無理やり目を開こうとするのも空しく、俺はケロスの力に飲み込まれて、そのまま深い眠りの底に落とされていこうとしていた。

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