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Only Time 7

 そんな、周りが見えなくなっていたのはどうやら俺だけのようだったらしく、虹生は違ったようだ。彼の手は俺の胸と自分の胸との空間を、一生懸命守っていた。 それはきっと、”幼馴染み、同性”そして、彼の戸惑いという空間。  不安定なままの俺たちのバランスは動作にも現れ、後ろ向きのまま俺に圧されるようになっていた虹生は、濡れた草に足を滑らせてしまい、彼の腕をしっかり掴んでいた俺と一緒に倒れてしまった。虹生がそれまで守っていた空間はそれによってなくなり、そのまま俺は虹生の上に重なり、夢中になって彼の唇に自分の唇を合わせていた。  酸素よりも欲しくなるお前の唇 耳に入って来るのはふたりの混ざり合う吐息 今まで感じた事もない人の体温を帯びたやわらかい甘い風は、俺の中で秘密に作っていた想像の世界をより色鮮やかにさせ、その中で光るような鼓動を響かせ、初めて知るその新しい甘美なその世界に飲み込まれてしまっていた。 そして自分でも気付かない内に、それは普段の俺からは思いもしなかったような事を、彼に始めてしまう。 俺の手はいつか彼の腕を離れ、彼のカラダの上を這い出す。 彼の唇を自分の唇で確かめながら、俺はさらに彼のもっとを確かめようと、彼の着ている物の中に自分の手を潜らせ素肌に触れる。 「 旺汰!! 」  いつまで経っても自分から離れないうえに、挙動も怪しくなって来た俺に虹生は業を煮やしたのだろう。突然大きく首を振り、自分の唇から乱暴に俺を離した。 そして平手打ちだ  横たわったままの、あの時の彼の目を今でも覚えている。 真っ直ぐに、ただ真っ直ぐに、俺の奥までも見るような瞬きもしなかった鋭く大きな瞳…… 昔から知る虹生なのに、虹生じゃないように思えて そして自分は…… 彼からの一喝でやっと我に返った俺は、彼の目をただ見つめ返す事しか出来なかった。 〈サーーーーーーー・・・・・・・〉 雨の音が再び自分の耳の中に戻って来た ここは昔遊んだ秘密基地の林…… けど…… 決して何かと間違ったわけじゃない   虹生…… 俺が彼に堕ちた日だ   そして 今日  俺は彼の中に入る
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