23 / 93

第23話 有真side

「被害届けを提出しないということで警察からは特に事情聴取はなかったんですが、僕も気になってカウンセリングの先生に聞いてみたんです」 彼は何も覚えていないと言うのだという。 だけどそれも嘘をついているようではなくて本当に分からないのだそうだ。 ただトイレや狭い個室等には抵抗があるようで進んで入ろうとはしないと言っていた。 その先生が言うには、あのことがあった日から少し時間も経っているし、人間の本能的に脳が忘れたい記憶に鍵をかけているのかもしれないと言っていたらしい。 (良いのか悪いのか、分からないな…) それからも佐奈のことが心の隅で気になり、名前や誕生日、どこに住んでてどんな暮らしをしているのか、どこの学校に通っているのか、知りたいと思ったことは気が済むまで調べた。 佐奈はあの日のことを忘れているのだから有真のことも当然忘れているだろう、ということも察しがついていた。 それでも、 彼は今元気だろうか。 笑った顔はどんな顔なんだろうか。 どんなことをしているのか。 知りたくなることは尽きることがなかった。 * そしてやっとこの日を迎えたんだ。
いいね
笑った
萌えた
切ない
エロい
尊い

ともだちとシェアしよう!