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バレンタイン☆ラプソディ・イン・ドライヴ4

「そんなんじゃねぇって、そこまで執着してないし」 「執着、いい言葉ですよねぇ。橋本さんは気づいてるんでしょ。宮本さんがどんどん格好よくなってること」 「イケメンの恭介が褒めても、信ぴょう性がないぞ……」  そんなことを言ったものの橋本自身にも心当たりがあるせいで、語尾にいくにしたがって声が小さくなった。 「はじめて逢ったときの宮本さんと、橋本さんと付き合いだしてからの宮本さんを比較したら、明らかに垢抜けた印象ですよ。優しい性格が雰囲気で伝わるから、女性受けしそうな気もします」 「恭介、何が言いたいんだ。雅輝のいいところくらい、俺だって分かってるのに」  会話の最中に信号が青に変わり、アクセルを踏み込む。橋本は周囲の車の流れを気にしつつ、ルームミラーに映る榊の顔色を窺った。 「ダブルデートしたときは、宮本さんを名字で呼んでいたのに、今は下の名前で呼んでますよね」 「そうだったか?」 「和臣ラブの俺にまで牽制するなんて、橋本さんってば可愛いなぁ」  ハンドルをぎゅっと握りながら、必死になっていいわけを考えた。肯定しても否定しても、宮本にぞっこんだというのを証明しそうで、安易に口を開くことができない。 「……ったく、そんな細かいとこに気がつくなんて。余計なお世話だ、クソガキ!!」 「アハハ。マンション探しに協力しますから、怒った勢いで俺のオデコを叩かないでくださいね」  そろそろ榊が住むマンションに到着する。先手を打ったのか、何かあると教育的な指導になっている、オデコの殴打を止める言葉を告げられた。 「叩かないから真面目に頼む。よろしくな」  橋本はいつものようにマンション前にハイヤーを停車させて、振り返りながら苦笑いを浮かべた。 「よろしく頼まれました。早く橋本さんが宮本さんをひとりじめできるように、精いっぱい尽力しますよ。それじゃあまた明日!」  眩しいくらいの爽やかな笑みを振りまき、車から降り立った榊の背中を、橋本は無言のまま見送った。 (恭介に図星を指されまくりで、頭が上がらないじゃねぇか。和臣くんネタでやり返そうと思っても言葉がひとつも出てこないなんて、情けないにもほどがある……)
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