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第29話

 一体彼は何を言っているのか。こんな夜中にいきなり押しかけ俺をたたき起こし、しかも東京からは期限も決めずに去るという。適当に生きているとよく言われる、さすがのこの村上春堂も絶句という言葉以外思いつかない。 「あのさあ、前々から思っていたけどお前馬鹿だろ? そもそもお前進学決まってたじゃん! 大学どうすんだよ」 「もともと進学する気なんてなかった、東京に未練はない」 「はぁ? だからって家出かよ! て言うかマジで家出だよな、これ。家族知ってんのか?」 「言っていない」  十八歳にもなって何をしているのか、もともとはるゆきと言えば何を考えているのかわからないやつだった。特に日々何も語ることはなく、ぼんやりと一日中窓の外を眺めている。ただ、カメラに対する執着はあるようで二人で授業をサボった日には、屋上で空の写真ばかり撮っていた。何が楽しいのかと聞けば、黙って撮った写真を見せる。でかい手に小さなデジカメだな、それくらいしか俺に思うことはなかったのだけれど。 「はるゆきよー、こまるぜえ! 何日かして警察から捜索願が出てるとか呼び出されたら俺どうしたらいいわけ? 捕まるじゃん!」 「捕まらないよ、知らないで済ませば良い」 「そーいうわけにもいかねえだろうが!」

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