まるで新聞小説を読んでいるかのように「次は?次は?」と40回全てが面白かったです。
職業作家の先生と女形少年、そして横恋慕をしてくる新聞社の男というメンツでの大正浪漫小説という事のようだったので、近代文学は教科書の範囲くらいしか知らない自分でもついていけるか心配でした。
しかし読みだしてみると、すっきりとした文体で読み進めやすく、それでいて描写が如実だったので、あっという間に登場人物達の傍らへ寄り添う事が出来ました。
何よりすぐに興味を惹かれたのが、みつまめ、キャラメル、シベリヤ、言問団子などのスィーツ達。
甘味にさほど興味のない事を黙っている先生と、甘党の少年の間にさらっと登場しては、当時の空気感を演出し、尚且つ二人の距離感も見えて、色々な意味で美味しそうでした。
私は食いしん坊なので甘味にくいつきましたが、同じように着物や履物、帝国劇場での女優劇など文化面でも丁寧な時代考証が施されていたので、大正時代にいるような気分になりました。
ストーリーも全40回と長編でありながら、毎回毎回見せ場があって、どこから読んでも登場人物達の魅力がわかるようになっている事に驚きました。
でも一番驚いたのは、先生と女中さんの間柄が二転三転していき、最後に明かされる秘密でした。
第4話で少年を想ってキャラメルを軒先に吊るしたり、第8話で少年と自分の蒲団の距離感を迷っている先生が可愛くて
てっきり新聞社の男性との三角関係を乗り越えれば、後は少年の声変わりのみが悩みのほのぼの日常になるのかと予想していました。
ところが第31話辺りから以降、劇的な伏線回収が始まり、第1話からすでに結末への滑走が始まっていた事に驚愕しました。
続編はラブ重視で重くはないとの事なので
二人が幸せにしてくれていたらいいなぁと思います。