今度の「fujossy」短編小説コンテストのテーマは、オメガバースです!
「fujossy」サポートブログでは、いつもとちょっと趣を変えて、このオメガバースについて解説してみます。
なにが特徴なの?
オメガバースの世界観についてご説明する際に、ひとつ重要な点があります。
それは、今の日本のBLファンにとって「これが、これこそがオメガバースだ!」という絶対正義として固まったルールはない、というものです。
もちろん「オメガバースと言えば〇〇だよね」的なお約束はあります。
しかしその最低限のお約束を守っていれば、どのように設定を活かし、どのようにアレンジするかは、ファンの自由なのです。
じゃあ、そのオメガバースのお約束とは?
オメガバースとして成り立つ最低限のお約束は、おおよそ以下のとおりになります。
【1:男性女性の他に、アルファ・ベータ・オメガという性別が存在する】
男性女性の性別がさらに分かれて、アルファ・ベータ・オメガの三つの性別が存在します。
同じアルファでも、男性のアルファ、女性のアルファが存在しますので、この世界では合計六つの性別が存在します。
【2:アルファは資質に優れ、ベータは一般層、そしてオメガは…】
そのアルファ・ベータ・オメガという三つの性別ですが、各性別にお約束が存在します。
様々なオメガバース作品に共通している主な特徴を抜き出すとこうなります。
アルファ… 社会的な資質に優れ、リーダーやエリートに多い。数は少ない。
ベータ… いわゆる一般層で、大多数を占める。
オメガ… 稀少。周期的に発情期があり、フェロモンを発する。男性でも妊娠する。
【3:オメガはアルファと「番(つがい)」として結ばれる】
オメガが発情期となると、フェロモンを発し、周りのアルファを引き付けます。これによってアルファを誘い、「運命の相手」を見つけ、そのアルファと結ばれます。
それは一生に一人という強い絆となり、子を成して家族をつくります。
いろいろあるけれど、結局……どうなの?
細かくいろいろあってめんどくさい…そう思うかもしれません。
しかし、アルファ・ベータ・オメガという三つの性別さえあれば、あとは作品によってばらばらです。
つまるところ、
男性であっても、運命に振り回されて、オメガには発情期があって妊娠しちゃう、そんな世界なんです!
そういうことなんです!
という事で……
アルファがいて、ベータがいて、オメガがいて…。
男性であっても妊娠できちゃう…。
そこさえ「オメガバースのお約束」として踏まえていれば、あとは作品によって自由です。
アルファが社会エリートとして貴族のように君臨し、オメガが社会的な劣等種として虐げられているような、階級のような設定を押し出した世界観もあります。一方で、オメガは数が少なくて貴重だから大事に保護されている…という設定もあります。
アルファやオメガといった性別は、あくまでも個性のひとつであり、なだらかに社会に受け入れられている世界観もあるでしょう。
オメガのフェロモンが、アルファだけではなくベータさえも引き寄せてトラブルになることもあるでしょうし、それは発情期に限らないかもしれません。発情期を「ヒートサイクル」や「ヒート」と呼ぶ作品もありますし、オメガの発情期が薬によって抑えられる…という世界観の作品も多く見られます。もちろん発情期の強さや影響力、薬の副作用などもいろいろです。
そもそも自分がアルファなのかオメガなのかは、血液型のように検査しないとわからない…といった設定や、それが明らかになる時期も第二次性徴や思春期になって初めて判明するという世界観だってあります。
アルファとオメガがつがいとして結ばれるという点さえも、アレンジは自由です。
さらにここには記していない、もっと具体的な肉体的・器官的な特徴を設定している作品も多く存在します。
いかにも!なオメガバースも…ありですし、
これがそうなの!?なオメガバースも…ありです。
オメガバースの設定を活かしつつ、物語そのものはそれっぽくない作品も自由です。
いろいろ自由に想像を膨らませましょう!
おまけ
とはいえ、これだけだと極端すぎますので、もう少し真面目なお話を。
実は、上記のお話はあくまでも「今の日本におけるオメガバース」であったり、「美味しいとこどりした結果のオメガバース」の説明になります。
そもそもオメガバースとは、海外の二次創作において生まれた世界観で、大きな元ネタになっているのは、狼の群れ社会だと言われています。
狼の群れ社会においては、主につがいを成す個体を最上位として群れの中の階級があり、最上位の個体を「アルファ」、そこから順に「ベータ」「ガンマ」と呼び、最下位を「オメガ」と呼称します。
オメガバースとは、このような狼社会のイメージや、海外で人気のケモノ萌えカルチャーを土台とし、そこにBLファンならではの「男性でも妊娠できる」という要素が加わって、想像が膨らんでいった世界観と言えるかもしれません。
(海外ドラマの名作『スーパーナチュラル』の狼男のエピソードが直接のきっかけとなったという説も、強くささやかれています)
海外発祥であるオメガバースの世界観が日本に伝播する過程で、翻訳や解釈などを通して変化していったのが、「今の日本におけるオメガバース」だと思われます。